「今日は講習じゃありませんから、金額は発生していません。ですけど、講習の時はちゃんとした『個人に合わせたプログラムや計画』を立ててより効率的にわかりやすく、指導をしていますよ。そこまでしっかりと個人に合わせて出し惜しむことなく指導してあげることが僕のナンパ講習ですね」
何を当然のことを言っているのだ。
店を出て、外に出て、Zさんと各々購入したアルコールを飲みながら、僕は心のうちで全力で彼を罵っていた。バカにしているのだろうか?人にモノを教えて金を取るという行為を、バカにしているのだろうか。『個人に合わせたプログラムや計画を組む』?そんなの、教える者としては当たり前のことだろう?イチイチそんな事を敢えて自ら口にしなくてはいけないほどの『ナンパ講習』なのか?それは口にしてはいけない言葉だ。教える者として当然のことを物珍しいものの様に口にした時点であなたは僕からしたら教師失格、価値のない『ナンパ講習』だ。僕は彼にニコニコと相槌を打ちながら胸の奥底で感情を烈火させていた。ドンキの前の大きな樹の下にいたからか、腐葉土の匂いがやけに鼻についた。
僕は期待していた。彼に講師として金を貰っている立場としての責務を期待していた。だがそれは多大な期待だった。僕の盲目的な勘違いだったのだ。
「僕は予備校の教員を元々やっていたのでZさんの仰ること、嫌ってほどわかりますよ。ちなみに彼、Zさんにいくら払ったんですか?」
「うん百は行かないくらい、それに近いくらいの金額を出して来ましたよ?」
時給換算で彼は幾らだろう?例えば家庭教師の仕事の相場は¥3000〜¥5000/時だ。¥10000/時の人も中にはいるが、それは東◯理Ⅲ、や、何年もキャリアを積んだ有名予備校講師が取るくらいの金額だ。形違えど教える者の立場として僕は絶望した。彼にそれほどの価値があるんだろうか?僕は彼の先程のアレを見て予測せざるおえなかった。『こうしゅうではない』とは言え、彼の指導の実力は疑問が残るものではないのかと。
彼だけじゃない、彼を含む『ナンパ講習』にそれだけの価値は果たしてあるのだろうか?家庭教師を雇って学歴をあげるほうが少なくとも僕はモテる方法の一つだと、(論理の飛躍、論点ずらしとはいえ、)思わざるおえなかった。
「凄いですね」
僕は溢れ出て仕方がない、『傲慢さ』を押さえつけながら堪えながら相槌を打つ。
「やはり自分を追い込まなきゃダメですから。追い込むことのできない奴は何やってもダメ。クソ以下です。」
追い込むことのできない奴。多分、僕のことを言っているのだと思った。柔らかい言い方で彼の優しさと大人げを感じたが、そんな彼を評価する余裕がその時の僕にはなかった。
「やはり再度、謝らなきゃいけないですね。僕は傲慢にもほどがありました。」
僕はうつむきながら正直な反省を口にした。
「お願いする理由としてとても不純な動機だったんです。形違えどZさんの教える人としての、責務を知りたくて講習をお願いした節がありました。本当に、ごめんなさい。Zさんには本当に申し訳ない事をしてしまったと、メールのやり取りをして、今こうやってZさんに会う前から凄く猛省していたんです」
「実はね、なんでかはわからないんですけれど、僕の講習は君の様な学歴のある人達が結構押し寄せてくるんです。ほんと、なんでかはわからないんですけど」
「そうなんですか?仮に頭がいい人ならば、少なくとも自分でトライアンドエラーして、いわゆる非モテがモテ男になるための努力を自分自身に課して取り組んだりはしないものなんでしょうか?ひどい事を言うようですが、本当は頭が良くない人なんじゃないかと感じるのですが」
「うーん。勉強しかしてこなかったからでしょうかね。そういうところ、彼ら頭が回らないみたいなんですよ。逆に聡明な人がいち早くモテるために、一つのキッカケとして講習に参加したりするんじゃないですかね?僕は彼らの気持ちはわからないですけど。ちなみにあの彼、○○大だそうですよ」
ここまで話して僕はスッキリした。僕が彼と関わる、学ぶべきところを学び切ったなという確信があった。スッキリしたので彼について掘り下げて行くことにした。僕は彼に「ナンパの原動力」について聞いてみることにした。
「Zさんがこの『ナンパ』を始めたキッカケってなんですか?」
「キッカケ、ですか」
彼は語り初めて5秒後、ほんの刹那の時間目線を下に落とした。それからはすっと上を向き、目線が浮ついたまま下を向くことはなかった。僕はふんふんと彼の話を聞いた。
僕は僕の知らない「ナンパクラスタ」の世界を感心しながら聞いていた。もう、失礼とか傲慢とか、そういう事を考えている暇も隙もないまま無意識に当たり前に彼の話を聞いていた。彼という人間の感情や、心、欲求、性質、全てをこの目で吸収してやる。そんな思いで、僕はなぜか冷静さを取り戻し話を聞き続ける。止まらずに昔話を続ける彼の上向きの目線はどこか遠くを見ている様で、何か寂しさの様なモノのほんの片鱗が出ている、そんな風に僕は感じていた。
「ほら、あの子とか即系じゃないですか?」
急にZさんは僕の彼の動向を凝視する目線を外させた。その先にフラフラ千鳥足の金髪のギャルがいた。
「今日まだセクれてないのなら行ってくればいいじゃないですか?あの子即系って感じじゃないですか」
「ははは…」
僕は立ち上がった。すっと、先までの傲慢さが消え失せた。彼女に近づき、声をかけた。ガンシカされ、彼女はタクシーに乗る。少し泣きたい気持ちになり、Zさんの元へと帰って行く。
「ははは。QBさん。QBさんの直した方がいいところは、ナンパし終わった後にそうやって嫌な顔をしてしまうところだと思いますよ」
「なんと…アドバイス。ありがとうございます。いくら払えばいいですかね?」
「ははっ。サービスですよ」
彼は爽やかな笑顔で僕に笑いかけた。清々しい気持ちになれた。
彼は、立ち上がり僕らの近くで腰をかけていた女の子の横に座り「ナンパ」を始めた。僕は彼の「ナンパ」を随分と長い事、10分ほどだろうか、後ろから眺めていた。声をかけながらチラチラと彼の和みを遠目から眺めていたが、随分と長い事その場で和んでいる様だった。恐らくば、彼は僕が見ている事を知っているのだろう。だから余計にその女の子を連れ出しはしないのか。まだ連れ出さないのか。早く華麗なる即、誘惑をこの僕に魅せてくれないのか。そう目を凝らしていたのだった。
結局彼はその場で長々と話をしていただけだった。連れ出す姿が見たかったが、仕方がない。難しい女の子だったのかもしれない。時間をかければ恐らくば連れ出しているんだろう。少し残念な気持ちになると同時に、彼から離れて行くたびに、彼の方を見るたびに何かしらの感情が僕から生まれていることがわかった。この感情は露わにしてはいけない、そう意識はあったのだが、僕はその意識とは真反対な事をしてしまった。
『QBしょぼうでです、さーせん』
Zさん、wくん、2さんが所属する入れられたラインのトークルームにて、僕はそう呟い出た後、何人かまた声かけに戻った。本当に声をかけるだけだった。何か込み上げてくるものがあり、閉じたもののまたすぐにラインのトークルームを見てしまっていた。
僕がそれを投稿したその後にZさんが爆発した跡が残っていた。いいや爆発ではない、冷却か。わからない。兎にも角にも感情が急激に切り替わった瞬間と、その後が書き記されていた。
「QBきもい」
「マジで無理」
弁解のしようもない、そして取り返しのつかないものがここに書いてあった。
町はああだこうだで狭い。女の子を捕まえられず、声かけを続けていればまた彼らに鉢会う。そのトークルームを見た後、またも僕はZさんとすれ違った。彼は逆5での声掛けをしている。とはいえ、話しかけているのは1人。残りの4人が話しかけているその女の子を好奇な目で見ながら笑っている。Zさんは笑いながらだが逃げ惑うその子のケツを追いかけ回していた。苦戦しているように見えた。今日の渋谷は人が少ない。複数にも果敢に飛び込まねばならない。ただ、全員にアプローチをかけなくても良いのだろうか?その女の子だけを追い回してなにか策があるのだろうか。僕はしばらく観察していたが、彼が彼女たちを連れ出す予兆は全く見えなかった。僕は彼の元へ駆け出した。ヘルプだ、ヘルプをしよう。そう思いZ氏が対応していない女の子達に声をかける。
「めっちゃ変な顔で見てるやん!何見てん何見てん」
テンションを高めに、笑顔で早く声を当てて行く
「えーー?なんかねーー」
なんなりと返事が返ってきた…がその時だった。
クルッと、僕らの前で1人の子を口説いている彼が振り向き僕の方へやってくる。
「あーー、なにー?ナンパシがやってきたんーー?こいつーーーやりたがりだなーやりたがりー!やりたがってるなら彼に任せるカーーー」
彼は女の子に笑顔を振り巻きながら僕を恐ろしく睨み付けると近づいてきて止まり、耳元で静かに次のそれを口にした。
「結局お前もあいつと同じ、オコボレ欲しさのやりたがりかよ。」
僕は電撃が走った。吐き気と怒りが同時に催した。脇をスッと抜けて後ろを行く彼に目線がもってかれ、女の子達が見えなくなった。
「冷めたわ」
振り返ると彼の背中がみえた。その去り際は余りにも美しくなく、弱々しく、情けない背中に見えた。彼はかなり辛抱強い男だと思った。本当は、うずうずとしていた感覚を僕と対面している間ずっと我慢していたのだろうから。だからか、あの爆発は一瞬で、気がついた時には冷え切っていたのだろう。だろう、と推定形になってしまうのは、それは対面した会話ではなく、「文字でのやり取りで」彼の着火剤を踏みつけてしまったからだ。ツイッター「界隈」を嫌悪する彼だ。こう今となって振り返ってみれば、彼にとって相応しい、僕にとっては気の利いた(性根の悪いも言う)着火の仕方が出来たと思った。僕はただただその彼の変異を受け入れていった。僕の感情は兎にも角にも後回しだ。
多分彼は虎視眈々と狙っていたのだろうと思う。僕の寂しさを形容する部分が露呈する所を。
罵声を受けた後、僕はまた1人で声かけをした後、またもZさん、そして今度はwくんが、見知らぬ彼説教しているところに遭遇した。僕は自然と彼らに近づいていった。Zさんは矛先を見知らぬ彼から僕に変えた。もう僕には、爽やかな笑顔を向けてはいなかった。憎悪と攻撃の意を露わにしていた。
「なに、即ったの?」
「いやぁ、即ってないですねぇ…すみません、しょぼうでなもんで、ははは」
ヘラヘラとした返事を返した。
「えっ、ダメじゃん、なにやってんの、早く声かけなきゃ、こんなとこにいる場合じゃないでしょ」
「たまたま通りかかったから、来ただけですよ?」
「君セックスしたいんでしょ?したくてしょうがないんでしょ?なにカッコつけてんの?なんなの?」
「セックスですか?」
彼は真っ直ぐに、僕に矛を刺し続けていた。きっと彼の『生理的無理』を今逆撫でしているんだろう。そう思った。彼はきっと今『凄く気持ちの悪い状態でいる』のに間違いない。僕はある事を思いついた。
「今日は三人の可愛いAV女優さん達とセックスしてきたんですよ。僕、今はAV男優をやっているんです」
そんなことを言った。この時僕は彼がセックスの回数で優位性を語りたいらしい様に見えたのでそれに乗っかることにした。彼は言った。
「えっ、なに、君は何?有名な男優なの?」
瞬間、僕は落胆した。彼にあまりにも形容し難い、酷く情けない回答をさせてしまったからだ。僕は彼が目線を落とすのを観察していた。その姿を観察すればするほど僕がクダラナイ低レベルな子供のような、酷く情けない存在になっていることが容易にわかった。わかったところでどうすることもできなかった。
「有名って…」
そう頭をぽりぽりと掻きながら答える。
僕は自分自信に落胆していた。自分で仕掛けたイヂワルに落胆してしまったのだ。そうだ、これは僕の落ち度だ、僕の器量不足だ、そう自己嫌悪に陥りながら、恐らくは彼はそんな僕が見てはいなかった。それに対する言葉を続ける。
「俺は知らないよ?君の名前聞いたことがない」
「そりゃぁ…」
「で?それは誰?有名な女優?名前は?」
「…」
僕のヘラヘラとした笑いを作る右端の口角が徐々に下に落ちていく。僕もまた、彼と同様に彼のことを見れなくなってしまっていた。彼を観察し続けながら僕は彼ではなく、僕自身を見つめていたのかと思う。情けなくて幼稚で、美しくない。そんな姿の僕が僕の目の前で下を向きながら座っていた。目の前の僕は目線を何回も下に落とす。ディスラポール。悪い意味でのミラーリングが起きていた。
「なんで君たちは性欲に素直にならないの?そうやってカッコつけてるの?」
「性欲ばかりの男は気持ちが悪いんだよね」
僕は彼の言葉を聞きながら、分析を始めていた。
【要は彼は、周りの男を気持ちが悪いと思いたいのだろう。そういうレッテルを貼りたいのだろう。これをホムンクルスの目を使ってみるとすると、彼の本質が見える。彼は性欲馬鹿になれない可哀想な自分を悔いているということに。性欲馬鹿だった昔の自分を否定したいのだろう。そうじゃないと硬く強く気高い今の自分を維持できなくなるから。もっとも賢く(曖昧さという自分を保持しようと)堅固に細く狭く生きている彼は、どんなものかは私は知る由もないが、彼が抱いた嫌悪感というのが彼自身の本質であることなんてきっと思うはずもないだろう。メンヘラに成らない為にはそういうあからさまな自身の毒となるものを飲まず食わずに愚鈍にいること、なのかも知れない。
そんな分析をする僕もまた本当に愚かだった。どちらが愚者なのかまるでわからなかった。彼を見て、そして彼と関わったことで、自分自身の思うとても汚らわしく恥ずべきことが見えているのは確かだった。心の狭い、自己中心的で、気持ちの悪い対応をしてしまったことを僕は反省すべきだということだ。彼に抱いた嫌悪感は間違いなく、僕自身の本質的なところだ。
失礼な態度をとらせてしまったというのは勿論、それを取った人間が失礼なこと以外ナニモノでもないのだが、その逆、失礼な態度をされた当人も何処かで失礼な態度を取ってしまった、ということである。彼もあからさまな萎えを見せていたように、彼が僕に仕掛けた「人として非常識で想定外で約束されたものとは全く異なる出来事の提案」「発言の無責任さ」「僕の視点から見た教える者としての疑問に思う部分」「想定外の気持ちの低さ、彼のキャパの狭さ」諸々、挙げればキリがない程の『それら』から僕自身も萎えてたという事だと思えた。意図として押さえ込んでいたとはいえ、確実に存在していた彼へ抱く感情が、非言語的な態度態度として、言動として、行動として彼に露骨に伝わってしまったのかもしれない。
彼との一件でわかった事、僕が反省すべきところがわかった。まず、主体性という事だ。自ら空気を作っていくという事。私はその空気の半分以上を彼に預けていた。その結果、不本意ながら彼に失礼な態度をとらせる事となってしまった。】
そんなような事を僕はその翌日、メモとして残している。
それからまたしばらく時が流れ、z氏とまた会うのではないかという機会ができた。2さんがZさん、wくんと共に飲みキャスを流していた。当然気は乗らないのに僕はその放送を開いた。会いたくはない。決定的な圧倒的な嫌悪を彼に抱いていた。そんな感覚を持ちつつもまたも僕はツイキャスでコメントジャブを打つ。なんだったかは忘れた。彼はこういった。
「うわ、出たよ、メンヘラ、こいつブロックだよブロック」
彼も全く同じ気持ちのようであった。もうお話にならないのは確認するまでもない、する必要もない、それで十分だった、その確認作業であった。それでも僕はあくまでその嫌悪に突き進もうとしていた。放送が終わった後、2さんから電話が来た。彼はなぜ、Zさんとい続けているのだろう。
「えっ?まじでくるの?」
「行きますよ。明日暇ですし、何よりあんなに嫌悪する僕がそこに行ったら凄くおもしろそうじゃないですか。でも2さんが来て欲しくないって思うのでしたら僕は行きません」
「いや…俺はいいんだけれど、今日はきついぞ?QBすげぇ叩かれるぞ…」
「それ含めてですよ。僕は構いません。面白そうじゃないですか。」
「QB…あのさ。これ、今は関係ない事なんだけれど、言うわ」
「はい?」
「俺さ、君に初めてあった時から言いたくて仕方がなかったことがあったんだよね」
「言いたかったこと、ですか」
「君はさ、いっつもいっつも俺らと話す時、本音で話していない」
「…」
「君はね、なんでか、かこつけて、本心を隠そうとする。君の本当の気持ちをさ。それさ、アドバイスもしたいってかんがえてる俺らとしてはスッゲー悲しいし、同時に迷惑なわけ。カッコつけんなよ。ありのままの姿じゃないけどさ、話してくれよ。全然伝わってこないんだわ」
「おぉ。」
「…」
「なんと、奇遇ですね、2さん、僕もね。僕もあなたに初めてあった時、今あなたが僕に言ったことと全く同じ事を思ってたんですよ」
「…舐めての?」
「いいえ、滅相も無い」
「QBさ、俺のこと『ナンパの腕』、大したことないって見下してんだろ」
「僕は今も2さんが凄腕だと本気で思ってますよ?」
「……あのさ、俺はね、QBが知らない所でうんと経験を積んで何人も抱いて落として来ているわけ。君は本当の俺を知らないの。」
「…」
「俺らにさ、
僕はもう2さんの言葉を聞いてはいなかった。彼の言葉を聞くたびに冷たく冷たく、そして悲しく哀れに惨めな感情になっていくのを感じていた。もうこれ以上2さん、喋らないでくれ。僕はそう祈りを捧げていた。
寂しさを包みこむ外殻をなすZさん。今思えば、2さんは常に、彼との繋がりと記憶を頼りに彼の棘を辛うじて避け続けるということをしていた。Zさんと関わっていたら普通は衝突を避けることはできない。だが2さんは常に宥めに回り、潤滑するようにしている。僕は彼を、Zさんを知らなかった。間違いなく大きな毒の針が存在していたのだが、それは闇夜の渋谷に隠れていたのか、見えていなかった。
「…またね」
2さんは最後にそう言い、電話を切ったようだった。
その後2さんは自らに、「一ヶ月20即チャレンジ」をツイッターで宣言していた。更新が止まった。Zさんが更新のない彼に煽りを入れているのがTLにうつっていた。その煽りの何週間か後、彼は「報告」と言うことで一ヶ月に十何即かをしました、ありがとうございました、そんな言葉を残していた。その後彼は何回かツイキャスをしていたのだが、仕事が本格的に忙しくなって来た僕は通知はみるものの、あえて聞くことはしなかった。
そんな出来事から随分と時が流れた後、もうすっかりと忘れていたころのある日、見知らぬアドレスから連絡が来た。
『お久しぶり。今何してんの?』
仕事のメールかな、と思ったが違うように思えた。これは僕の知っている人か?すぐに返信をすることはやめ、必死に頭を振り絞る。同じタイミングで、僕がツイッター上で仲良くしている、『女アカウント』の1人から「QBさん、時間あったら今から一緒に飲みません?w」との連絡が来ているのが見えた。
ああ、Zさんか。
そういえば彼女とZさんは今度一緒に飲もう、そう言ってたのをうっすらと何処かで見たような気がする。僕は返信として「お久しぶりです。家でくつろいでいました。」そう送った。
本当にあのアドレスはZさんか?送った後にそんな心配をしたが、アドレスの表記から察するに恐らくばそうであった。が、念のためそれを確信するためにツイッタを開く。案の定、TL上に彼女がZさん(とwくんも)と飲みキャスをしていたのが見えた。Zさんのトップページを見ると「これで最後」だと言っていた「ナンパ講習」の募集を再開しているのが見えた。見知らぬ彼はどうなってしまったんだろう。僕は配信を聞いてみることにした。ちょうど性についての話題をしていた。
僕は女の子と語る彼の口調に何か歪さを覚えていた。聞いていられない、何か僕が受け入れることができない無理な雰囲気がそこにあった。僕は一言コメントを残し、僕は早々にその放送を切ってしまった。耐えられなかったようだった。
「ナンパしないの?なんかみんなで仲良くなったから一緒にしようかなと!」
メールアプリにそんな文面が先の僕のメールの返信として届いていた。
*
*
h28.12.28 誤字修正