愛と寂の輪廻 4、ナンパ講習とは
- 2016/12/24
- 22:08
*これはフィックションです
それから僕は極力彼らに関わらないようにした。2さんには気不味さを、Zさんからは不信感を抱いていた。カレー屋ではあまり多くを学べなかった。凄いところを見た、ただそれだけだった。彼らから学び取れるものがまだまだある確信はあったのだけれど、気不味さと不信感からどうにもその気分にはなれなかった。Zさんからはツイッターでフォローはされたけれども、恐らくば彼と今後会うことはないんだろう、そんな事を思っていた。
そんな中Zさんが「ナンパ講習」をするという事を目にした。
『僕が行う講習はこれで最後になります。最後ですので僕の今までの経験全てを惜しみなくお教えします』
そんなような事が書かれていた。なるほどこれはちょうどイイ、そう思った。一度あったよしみもあるし、あの誘惑術を僕はまだ学びきれていない。ただどんな誘惑術、マインドよりも、僕が終始彼に抱いていた疑問とは『ナンパ講師という「教える者」として、どんな教育的な考えを持っているのか』、その一点だった。僕は彼のもつその回答が知りたかったのだ。教える者には必ず何か答えを持っている。古株と言われるほど長くこの界隈に身を置き、常に自信を保ち続ける彼を知りたいがため、僕は早速彼の講習の応募フォームのボタンを押した。
講習金額がやはり一番気になるところであった。僕は去年、いくつかの講習へ赴き、いくばかの大金を吸い取られていった。僕はもうそれにうんざりしていて、ぼったくり、そんなものが蔓延するこの「ナンパビジネスをぶち壊してやりたい」そう思うようになっていた。僕は教員をやっていたのもあり、彼らの教え方、ビジネスとしての取り組みに些か疑問を抱く事が多々あった。
Zさんは他の講習を批判していた。詐欺まがいの講習が蔓延していることに関して否定的で、僕の考え方に同意を示す事ができる方のようだった。ツイッター状でのやり取りでそれを知る事ができて僕は安堵した。教育の仕事として学びや色々な人の価値観がまだまだ欲しかった僕は、何かを教える事に対して自信の持てる人間に興味があり、そういう人達との接触は僕の教育者としてのスキル向上につながる筈だという目論見もあった。勿論口説く力はまだまだ未熟だ。花見の時の彼のようなことはまだまだできない。そんな未完成さを全力で解消したい気持ちがとても多かったから、僕にとって『講師としての彼』と会うことは間違いのないメリットであった。
『あなたが私に払っても良いと考える金額をここに書いてください』
そう書かれていた。
僕は真っ先に
【¥10000/回】
と記載し、その後に書かれている。
『私、Zに言いたいことがあれば書いてください』
と書かれているところに¥10000/回である理由と、今まで歩んできた「ナンパ」に対する意識、講習を受けることになったらの意識表明、そんなようなものを随分と長ったらしく(かなり自分本位ではあるが)彼にぶつけた。どんな内容だったのか、思い出せないが、その金額で教えることは出来ないとの旨の連絡がきた。細かすぎて伝わらない例で例えるのであれば、ヤフオクで0円スタートなのにいざ入札した時「最低落札金額を上回っていません」と表示された時の気持ちになった。
ただ、彼はその旨だけのメールではなかった。僕のメールに対して非常に丁寧に返事を返してくれた。僕の持つ疑問に対して彼の考え方を全てに回答してくれた。彼は真面目なんだろう。繊細で丁寧な人物なんだろう、そう思えた。感覚が相当鋭敏に研ぎ澄まされている。そんな彼の一面がこの返しの文章に十二分に現れていて、僕は彼の講習は受けることは出来ないけれど、彼にこのメールを送った価値はあったなと、その時そう確信した。僕は感謝の意図をメールにて伝えるためまたも長ったらしい文章を製作し始めた。
ただ、所謂考え方の違いという奴か、喜びとともに僕は、ある種の『同種の』疑問も感じえていた。
それからひと月ほど経った。だんだんとAVの仕事が増えてきて、僕は兼職していたサパークラブ、家庭教師の仕事を休職することにした。営業する時間も営業について考えることもあまりなくなっていた。
その日は珍しく現場をダブルで組んでいた。朝から夜の遅くまで掛かり、計2回、そのうち一回はヒト絡み中に3謝という人生初の経験をする事ができて、疲労感以上に達成感に包まれていた。しかし家に着いた時にはその気は失せきっていて布団に潜りながらツイッターをし始めていたのだった。
タイムライン上に2さんのツイキャスが表示されていた。僕は気不味さはあれどやはり僕は彼を尊敬していたし、また会いたいなと思っていた。聞いてみるとどうやらZさんとwくんと一緒に飲んでいるキャスのようであった。酒が入っていて少し酔っているのか、みな口々に「ナンパ」を語っていた。
彼らは批判を沢山していた。ルーティンの無意味さ、「即系ナンパ師」のレベルの低さ、意識の持ちよう、講習の批判、などなど。いかに今の「ナンパ」が数年前よりもレベルが下がっているか、そんなようなことを、あの花見後のカレー屋の時のように口々にしていた。ただ僕は今その場にはいないから、その空気をわざわざ読んで、彼らの話に合わせてただただ相槌を打つ必要がなかった。だからそれを聴きながら僕は何か、その彼らの語る「ナンパ」の話に反論をしたくなってきていた。否定する必要はないじゃないか、貶す必要はないじゃないか、そんなの君たちはただの『老害』じゃないか。そんな事を僕は彼らに抱き始めていた。
セックスの話題になっていたので僕はこのツイキャスにコメントを残した。
「セックス最高〜」
そんなような、短い短い意味のない言葉を打ち込み送信した。
2さんが反応した。
「おおQB」
にこやかに返事をしてくれた。そのあと続け様にZさんが返事をし始める。
「あ?QB?あいつかよ。あいつにはさぁ、言いたい事が山ほどあんだよ」
急に彼は苛立ちを露わにし始めた。
唐突なそれに僕は傲慢にも感心した。
「えっ?じゃあQBよぶ?」
「おうおう、かかって来いよ。QBとなら一緒に酒飲んでやるよ」
それを聞いたのち、僕は終電がもうないのになんの身支度もせず家を飛び出した。僕もだ。Zさんと同様、彼に言いたい事が山ほどあった。今すぐに彼に会い、そして飲みたいという気持ちが爆発していた。僕は何の躊躇いもなくタクシーを捕まえ、指定された場所を運転手に伝えた。
僕は興奮していた。そして緊張していた。Zさんは随分と僕へ感情を荒げていた。多分、戦いになると思った。大丈夫だろうか、僕は勢いよく飛び出してきたはいいけれど、いざ彼に直面した時に、自分の気持ち、思いを存分にぶつける事ができるだろうか。とてもとても心配だった。ただ、確実に言えるのは彼に言葉できちんとそれを伝えたいということ、そしてそれに対する彼の言葉をしかと受け止めたいということ。この心配は杞憂という訳でも第六感という訳でもなくて、きっと自分が課した自分自身との戦いそのもの、なのかもしれない、なぜかふとそう思っていた。
(あぁそういえば、飛び散り被弾したこの上着…流石に…とは思ったが白いシャツだ他の人のセイシは目立っちゃいないだろうし、女優さんの聖水は汗か何かと勘違いしてくれるはず)
関係ない事を考えることで、その低く震える感情をなんとか押さえ込んだ。
某刻某所
息を切らしながら僕はハチ公前にしゃがみこんだ。どこだ、Zさんは何処にいる。完全なる敵対心のようなものを僕は彼に抱いていた。しかし中々連絡が取れず、ああだこうだで一時間ほど待たされた後、ツイッターのダイレクトメールにて、w君から、急ぎ気味な慌て気味な文調で連絡が届き、そこへ向かった。
車の走行する音しか聞こえぬ道の脇に彼らがいた。
w君、そしてもう1人、見知らぬ人がいた。僕はw君に明るく挨拶をした。
「お久しぶりです」
「…」
返事がなかった。
おかしい。何かおかしい空気であることには間違いなかった。
「Zさんと2さんは何処ですか?」
「Zさんは即ってるよ。2さんはそろそろつく。」
そろそろつく、といった頃ちょうど、2さんがやってくる。
「こんばんわ」
「…お、QB」
返事が低い。どういう事だろうか。ただ間違いない、彼らは今「何かをしている」ようだった。高ぶる興奮を早くぶつけたかった僕だったが、渋々、状況をいち早く飲み込もうと僕も彼らの声のトーンに合わせて行く。せっかくの飲みなのになぜ彼らはこんな顔をしているのか、愚痴の言い合い、激討論がこれから起きるのだとしても、別にそんな顔をしなくてもいいんじゃないのか?何かに切羽詰まっているような、切羽詰まったこの苛立ちを無性に無関係の人や物に当たってやりたいと思っているのではないかと勘ぐってしまうかのような空気感だった。正直なところ僕は今ここにいる彼らのことを気持ち悪く感じていた。
会話がないのは嫌だったので僕は小さな声でw君に話しかける
「彼…誰ですか…?」
「Zさんの講習生」
「えっ、今講習中なんですか?」
「いや、そうじゃない」
そうじゃない?どういう事だろうか。ますます彼らが何をしているのかわからなくなっていた。放送では彼はいなかった気がする。つうかこれから飲む訳じゃないのか?というか、僕に『飲んでやるよ』と振ってきた本人は、その対象が急いでやって来たというのにどれだけ待たせて、何を自分勝手なことをしているのだろうか?気持ち悪い空気感に僕は段々と怒りが芽生えてきていた。
見知らぬ彼に話をふってみようかと思ったが、それはやめておいた。彼はかなり思いつめた顔をしていた。精子と塩まみれで(そういえば)ノーパンの僕程の常識ハズレでは(多分)ないにしろ、彼は明らかに『ナンパをする格好』ではなかった。生まれてこの方、女に関わって来た事がないような格好だった。初心者なんだろう。余裕のない、完全なコミュ障なんだろう。たまたまZさんのそれを見つけて、恐らくば必死の思いでzさんに縋り付いているのだろう。これからファッションの講習でもするのだろう。いや待てよ?終電真夜中に「ナンパに適した服屋」なんて何処も空いていないような。まさか彼はファッションの講習すらも受けていない、本当に真っさらなZ塾新入講習生なのか。だからこんなにも思いつめた不安そうな顔をしているのか。勝手にそう思っていた。
「はい、即って来ましたよっと」
10分ほどしてzさんが到着した。
挨拶よりも先に、終電もないのに即った女の子はどうしたのだろう、という疑問が口からでかかったが、状況を整理する事に集中した。僕がZさんに挨拶をするその前にZさんはこの場の空気を塗りつぶすかのようにこんな事を言った。
「150ポイント、いや、151ポイントか」
ポイント?はて、本当に彼らは何をしているのだろうか。Zさんは以外の三人の表情が更にまた重く暗く、そしてより居心地の悪い空気感に包まれていくような感じがした。Zさんは僕らの中に入ると座り込み、見知らぬ彼を睨みつける。そしてその見知らぬ彼に向かってまるで嘲笑うように言葉を吐き捨てた。
「あれ?まだいたんだ?」
見知らぬ彼は更に顔を歪ませた。
よくない、今この場非常に良くない空気なのは間違い。僕はとにかく質問することにした。
「何してるんですか?」
「ナンパバトルだよ、QB」
2さんが答えた後、Zさんが詳細を口にする。
「ポイント制。声かけ1点、バンゲ5点、連れ出し50点、即100点。ビリは10万な。」
「はい?」
「俺、今、151ポイント。ほらほら君たち、早く行ったほうがいいんじゃない?負けちゃうよ?ま、無理だろうけど」
『しょぼうでのかい』
そう書かれたラインのグループに僕は招待されていた。僕は混乱しながら街の中を彷徨いながら女の子に声かけをしていた。もう訳がわからなかった。訳がわからぬまま声かけを続けていた。
一時間ほどしたか、これから満喫に泊まるという子を形だけ「連れ出したフリ」を一回して僕は道玄坂のとあるスロープに腰をかけていた。僕は空を仰ぎながら眉間にしわを寄せていた。
「酒飲んでやるよ」
そう言ったから来たのに彼はボケているのか?それとも行動で示して行動で語ろうとかそういう深い意味があるのか?納得のいくような答えを考えようとすればするほど、くだらなく感じて来てもう何もかも投げやりになっていくのがわかった。全てを失い、失望した、そんな感じ。僕は『彼の欲する意図に「寄り添って合わせることのできない器量のなさ」に腹立たしい』、そんな自己嫌悪で彼に対して湧き上がる芽生える感情に必死に蓋をしていた。(失礼だ、申し訳ない、失礼だ、そんな感情は失礼だ。)僕は自分の中で必死になっていた。
彼とすれ違った。
彼は僕に声をかけて来た。笑顔だった。
「どう?調子は」
僕はとっさに苦笑いで返す。
「いやぁ、全然ですね。ラインで送った通りで、何点でしたっけ?あなたには叶いませんよ、全く」
「ははは。俺はもう負けることはねーから、50ポイント、くれてやってもいいぜ?」
またも笑顔で、異様に爽やかに彼は僕に告げた。僕はまたも苦笑い、いやもはや別の笑い方、いわゆる「ヘラヘラ笑い」で彼に返事をしていた。そんな中身のない会話をしている時だった。見知らぬ彼が僕らに近づいて来た。Zさんは彼に気がつくと血相を変えた。
「おい、いつまでそーやってるんですか」
冷たい、途轍もなく冷ややかな表情をしていた。僕はZさんと彼に言葉を吐く。
「講習中なのでしたら、僕は退きますよ」
「…」
今にも泣きそうな見知らぬ彼を尻目にしてまたも爽やかな笑顔を僕に向けながらZさんはいった。
「いいや、今日は講習じゃないよ」
「講習生が講習じゃないのに来てるんですか?」
「なんかね、彼、配信を聞いたらしくて、どーーーしても会いたいって言うから来たらしいの」
「はぁ」
Zさんは見知らぬ彼に近づいて行った。そうして彼の肩を強引に掴むと、強引に引っ張っていき、立ち止まってる僕の数歩前まで連れて来た。
「えっ?なんのために来たの?突っ立てるだけなの?目障りなんだけど」
彼は答えない。
「なんなの?君はなんなの?なんのためにいるの?」
次第にZさんの声が荒ぶって行く。
「いじけてるだじゃなんもわかんねーーよ!!!おい!!!」
「ほら!あそこに女の子いるよ?行かなきゃ、行かなきゃダメじゃないの?ねぇ?」
下を向いて彼は俯いている、小刻みに震え出している。
「どうなんだよ!黙ってたらわかんねーんだけど!!」
「やります!!!!」
見知らぬ彼はやっとの思いで声を張り、Zさんがさす女の子の方へ小股で歩いて行った。
「…ほんとにやる気があんのかよ!」
zさんはそう冷たく震わせた声を出した瞬間、亀より遅くトボトボヨボヨボと歩む見知らぬ彼のケツをめがけてケリを入れた。
「イッ…」
彼の苦悶が聞こえた。
それか何発も何発も、いや、何発と言う数ではないか、3、4回か、彼は小股で歩く見知らぬ彼にケリを入れていた。不幸なことに僕以外傍観するものはいなくなってしまっている夜の寂れた渋谷の道玄坂を逃げるように小走りで、もう随分先まで行ってしまった彼に指定された女の子まで見知らぬ彼はかけて行った。
Zさんは文字通り唖然としている僕のところまで戻って来くると、今度はクラウチングスタートの姿勢をとった。姿勢をとりながら僕の方へ顔を向け、またも爽やかな笑顔を見せながら言った。
「今日は講習じゃないからね、何してもいいんですよ」
そのままZさんは助走のついたケリを入れるためか全力疾走で『見知らぬ彼』めがけて走って行った。
「はははっ、たっのしー」
耳を塞がなかった僕は後悔した。僕はもう『彼』が、見るに耐えなくて、そこから逃避するが如く『彼』とは逆の方向へと歩んで行った。道玄坂を下りながら僕はあきらめた。今宵は彼らの「ナンパゲーム」を、せめて形だけでも取り繕ろうと、街でふらつく女の子達に再度声を掛け始めた。『僕は「ナンパ」しに来たんじゃない。』それを伝えるのを諦めた。結果としてその諦めが、彼らの僕に対する嫌悪を増幅させてしまうことに繋がる事になるとは僕はまだわからなかった。僕が声をかけるべく存在は女の子ではない背中で打撃の音を上げている「彼等」だったのだ。
あたりを大回りに一周し、某キホーテにたどり着く。店の前でZさんと見知らぬ彼、2さん、w君が話し合いをしていた。僕もそれに寄って行く。僕は殆ど諦め気力尽きていた心持ちではあったが、これはもしや「彼に自分をぶつける」ラストチャンスが訪れたのかもしれない。そう思った僕は気持ちを晴らしていた。
僕の接近に彼らは気がつく。どうやら彼らはこの見知らぬ彼をどうにかするようだった。僕らは5人は店内へと入って行った。
見知らぬ彼は2さんに連れられ服を買いに行ったようだったが、すぐに戻って来た。見知らぬ彼はよくわからないグラサンをしていた。
「なんだそれ」
Zさんは軽蔑の失笑を目元が見えぬ見知らぬ彼に当てる。2さんに買ってもらったピーコックだろう。見知らぬ彼はZさんにそう言われると慌ててグラサンを外した。グラサンの下にはとてもとても、悔しそうな顔があった。
酒コーナーへとやって来ていた。気まずい、ただただ気まずい空気が僕ら5人、否、Zさん以外の4人を支配している。Zさんはあいも変わらず爽やかに笑顔をしていた。
「もうずっとそこにいろよ」
Zさんは見知らぬに笑いながら吐き捨て、またもケツを蹴り飛ばした時のように見知らぬ彼に近づいて行った。
「Zさん!」
僕はいつの間にか硬く閉ざされていた口紐を無理矢理振り解く。
「ん?」
「まぁまぁまぁ、今日は飲みましょうよ!飲むために来たんすよ!」
そう言って僕は目の前にあったモエシャンパンを掴み、彼と見知らぬ彼の間に割り込んだ。
「えっ」
Zさんがどんびいたのがわかった。
「いやいや、ぶっ込みすぎっしょ」
「ええぇ、シャンパンだめですか?モエシャンパンだめスカ?ドンペリじゃなきゃダメかなぁ」
「いや、そう言うんじゃないから…高いじゃん、つーか、ぶっ込みすぎじゃん。」
「えーーーー?!うそん!シャンパー二はダメか、シャンパーニ島で作られたスパークリングワインじゃダメか!うん、しゃあないですよね、確かに高いですよね。うん、じゃあ安価のコレしかないか!」
「いやいやいや、君ぶっ込みすぎだから。ワインじゃないから、ワインはマジで違うから」
「なぬ!ちがうの?!じゃあ…」
「止めて、2、彼を止めて…」
「QB落ち着け」
「落ち着いてらんないですよ!飲むんならちゃんとしたの飲まなきゃ!あっ、2さんそういえば焼酎好きでしたよね?だったらこれじゃないっすか〜?」
「バカ?バカなの?なんでさっきより酷くなってるの?アホなの?」
「飲まないんすか?Zさん!飲みに来たのに!ぶっ込みましょうや!俺はぶっ込みますよ?!」
「いや俺明日仕事あるからね、そんなできないです…2まかせた」
「QB赤霧島はない。QB赤霧島は絶対おかしい」
コントのような展開に半身僕は笑いながらも、(『飲んでやるよと言ったのにいざ酒買おうとしたらドン引き、そして僕との対面をナンパという形で逃げるスタイル』清々しく最低だ。)と、そう心の中で別の意味合いで笑った。
僕はその嫌悪感を逆手に取りむしろ素晴らしいね!いいね!と抑え付けようにしながらシャンパンをとりあえず購入した。彼らは『氷結』を一本ずつ購入し、外に出た。