【北海道ナンパ6日目】欠航、再決行
- 2015/12/19
- 01:41
北海道ツアー最終日。
皮肉にも心地の良い日差しが私を目覚めさせた。最後の夜も虚しく、「ツアー0即」という結果で終わった私はホテルで1人、帰りの支度をする。
フライトは格安航空の最終便。今日一日という時間はあるが、もう営業はできない。やるなら新千歳で、となりそうだが営業への貪欲さは微塵の欠片もなかった。面倒さと帰りのトランクの中身を考慮した結果、北海道でシンジさんと新調した計44500円の営業用の服は着ずに、北海道まで来るときに来ていたダボダボのマウンテンコートとゆるめのチノパンというダサい格好で出ることに決めた。
帰りの支度を済ませ、そのままホテルでのバイキングに向かった。おっさんばかりの朝食バイキングにて、1人の綺麗な女の子を見つけた。キツめの顔だが、何か翌日の疲れがあったのか、彼女の普段持ち合わせているであろうキツさというのは微塵も感じられなかった。
タートルネックに強調された胸が私の目の動きを固定させ、高タンパク料理を選別しに行こうとしていた私の歩の進行方向をくるりと変更させた。
だがうっすらと見えた。ヒゲまみれでぺちゃんこの髪で、猫背で服のバランスが悪くダボついた男の姿が。気持ち悪かった。その男に文句を言いたくなった。そんな姿で営業をするのかと。
それはガラス越しに反射して映る私の姿だった。私は私の今の姿に気がつくと、少しの間躊躇した。そこから彼女を見ながらの葛藤が起きる。
(とてもじゃないけど声をかけるべく格好じゃあない。失礼だ。でもせっかくのチャンス、オープンは間違いない状況。声をかけるべく理由作りは簡単。ご一緒してもいいですか?だ。この子は私の前に降り立った最後の最後のチャンス、天使みたいなもんだぞ!)
…女の子に声をかけるまでの時間のリミットである3秒はあっという間に過ぎさっていて、私は地蔵をしてしまった。もう完全に営業モードはなくなっていて、ナンパ基礎体力も北海道に来る前同様のゼロという数値に戻ってしまっていた。私の中での北海道営業はもう完全に終わったんだなと感じられた。
外は白銀の世界であった。トランクのローラーがまともに動かないせいか、雪を削るようにトランクを引きずって行った。
さて、時間はある。だが行くあてもないし、営業も出来ない。何をするか悩んだ挙句、観光をすることにした。トランクをロッカーに預け、時計台や北海道大学を歩いて回った。特別感動はなく、こんなものかーといった感じで見て回っていた。普段テレビでしか見たことのない場所の知識が一つ二つと増えていたことを1人でに喜んでいた。道で女の子とすれ違っても、私の脳内にあるであろう「ナンパ中枢」は刺激されることはなかった。
そういえば、ラーメンをそこまで食べていなかったので、昼ごはんにラーメン屋に入る。美味しかったが、感動するほどの美味さでもなく、んま、こんなもんかーといった感じで店を後にした。
ラーメン屋さんを後にした後、ロキノン系女子と和んだ喫茶店に入った。700円のコーヒーは確かに高いが結構美味しかったので、悩んだ挙句また入ることにした。人はちらほらいたが、偶然にも女の子と話したあの薄らい半個室席に案内され…ることはなく、お一人様用のカウンター席へ通される。そこで、あのお高いコーヒーを頼み、北海道の出来事をまとめることをしていた。箇条書きに、なるべく文章にせず、言われたこと、あったことの事実を思い出せるだけ多く、スマホのメモ帳アプリに記入していく。
コーヒーが完全に冷え切ったころ、ラインが来た。fさんからだった。現在札幌にいるのは私とfさんだけ。そして私とfさんは帰りの便も航空会社も同じであった。どうせだから一緒に帰ろうということになった。
『空港行く前にラーメン行きませんか?』
そうメッセージが来たので、私は二つ返事で了解の返信をした。
日は暮れ、更に寒さを増す曇り空の某所で待ち合わせる。雪もまた降り始めていた。ああ、これが北海道なんだなと寒さに震えながら感心していた。
fさんはbさんと一緒に来た。旭川に向かったbさんも丁度こちらに到着したらしい。bさんも今日帰る組であった。なので3人で北海道最後のラーメンを食べることにした。
fさんはグルメ男である。札幌でラーメンを食すためにラーメンウォーカーを買ったりしていた。そんなグルメのfさんが選ぶ何やらすごい有名らしいラーメン屋へ積もる雪道を掻き分けながら足を運ぶことにした。いつの間にかまた、昨日のように激しい横殴りの雪に変わっていた。
「これ雹じゃない?!」
道に迷っている最中、bさんがいう。確かに今降っている雪は何かおかしい。建物を連続で叩きつけるような音がしている。コートに付着したそれを見ると、何やらBB球のように丸い氷の粒であった。
「やばいやばい!」
我々は走って店に向かった。
なんとか目的のラーメン屋に到着する。凍るように冷たくなった足の裏と、途中雹から霙になったおかげでびしょ濡れになったコートによって震わさざるおえない固まった肩は、店内の暖かな照明と暖房の効いた空気に和らいでいた。店に客はまだ来ておらず我々3人は旅行荷物でカウンター席を占領するかのように座った。
目的の醤油ラーメンを喰らい、醤油も捨てたもんじゃないなと思っている最中、店員の、恐らく店長さんであろう人に話しかけられる。
「旅行っすか?」
「そうっすね、んまもうこれから帰るんすけど」
bさんが、軽ーい返答をする。
「飛行機?」
「はい」
「…大丈夫ですかねぇ。今雪凄いでしょ?今日結構激しいからもしかしたら欠航とかあるかも」
「えぇっ!」
「確認しといたほうがいいがもしれませんよ?」
店長さんの忠告を我々はすぐさま、それぞれのスマホを取り出して実行した。暫くしてbさんの顔が青ざめてきた。
「えっ」
「ど、どしたの…」
まさかとは思いながら私は恐る恐るbさんに聞いた。
「俺の乗る便…書いてないんだけどw」
「うそやん、まじかよw」
「まじまじwやばいどうしよー」
私とfさんが乗る便はちゃんと書いてあって、2人でホッとする。同時に、ホッとしながら彼の悲劇に我々はどうしたらよいかわからなかった。
「もしかして見てる日にちが違うんじゃない?もーちょっとよく確認してみって…」
「あっ、ほんとだw日にち違ってたわ…w」
「なんwwww」
bさんの壮大なボケに我々一同は笑った。雪いえど、欠航なんてよっぽどだ。普通は飛ぶにきまっている。そう笑いながら私達はラーメン屋を後にし、新千歳空港までの電車に乗った。空港に着き、bさんと別れた。私とfさんは2人で空港のチェックインを済ませ、お土産を選別し、ゆとりを持って荷物ゲートをくぐった。
『○○○、△△△便お乗りのお客様にお詫び申し上げます』
待合所全体に、いやもしかしたら空港全体に伝わる重要なものだろうか、不自然なほどにシートがごった返していて騒めいている待合所中にそんなアナウンスが響き渡っていた。
「なんか言ってますね」
fさんがいう。
「嫌な予感が…」
私にはわからない、だからかどうかはしらないが、代わりにアナウンスがこう答えていた。
『○○○、△△△便、悪天候のため欠航とさせて頂きます。』
【北海道ナンパ】は、まだ終わっていないぞと。
皮肉にも心地の良い日差しが私を目覚めさせた。最後の夜も虚しく、「ツアー0即」という結果で終わった私はホテルで1人、帰りの支度をする。
フライトは格安航空の最終便。今日一日という時間はあるが、もう営業はできない。やるなら新千歳で、となりそうだが営業への貪欲さは微塵の欠片もなかった。面倒さと帰りのトランクの中身を考慮した結果、北海道でシンジさんと新調した計44500円の営業用の服は着ずに、北海道まで来るときに来ていたダボダボのマウンテンコートとゆるめのチノパンというダサい格好で出ることに決めた。
帰りの支度を済ませ、そのままホテルでのバイキングに向かった。おっさんばかりの朝食バイキングにて、1人の綺麗な女の子を見つけた。キツめの顔だが、何か翌日の疲れがあったのか、彼女の普段持ち合わせているであろうキツさというのは微塵も感じられなかった。
タートルネックに強調された胸が私の目の動きを固定させ、高タンパク料理を選別しに行こうとしていた私の歩の進行方向をくるりと変更させた。
だがうっすらと見えた。ヒゲまみれでぺちゃんこの髪で、猫背で服のバランスが悪くダボついた男の姿が。気持ち悪かった。その男に文句を言いたくなった。そんな姿で営業をするのかと。
それはガラス越しに反射して映る私の姿だった。私は私の今の姿に気がつくと、少しの間躊躇した。そこから彼女を見ながらの葛藤が起きる。
(とてもじゃないけど声をかけるべく格好じゃあない。失礼だ。でもせっかくのチャンス、オープンは間違いない状況。声をかけるべく理由作りは簡単。ご一緒してもいいですか?だ。この子は私の前に降り立った最後の最後のチャンス、天使みたいなもんだぞ!)
…女の子に声をかけるまでの時間のリミットである3秒はあっという間に過ぎさっていて、私は地蔵をしてしまった。もう完全に営業モードはなくなっていて、ナンパ基礎体力も北海道に来る前同様のゼロという数値に戻ってしまっていた。私の中での北海道営業はもう完全に終わったんだなと感じられた。
外は白銀の世界であった。トランクのローラーがまともに動かないせいか、雪を削るようにトランクを引きずって行った。
さて、時間はある。だが行くあてもないし、営業も出来ない。何をするか悩んだ挙句、観光をすることにした。トランクをロッカーに預け、時計台や北海道大学を歩いて回った。特別感動はなく、こんなものかーといった感じで見て回っていた。普段テレビでしか見たことのない場所の知識が一つ二つと増えていたことを1人でに喜んでいた。道で女の子とすれ違っても、私の脳内にあるであろう「ナンパ中枢」は刺激されることはなかった。
そういえば、ラーメンをそこまで食べていなかったので、昼ごはんにラーメン屋に入る。美味しかったが、感動するほどの美味さでもなく、んま、こんなもんかーといった感じで店を後にした。
ラーメン屋さんを後にした後、ロキノン系女子と和んだ喫茶店に入った。700円のコーヒーは確かに高いが結構美味しかったので、悩んだ挙句また入ることにした。人はちらほらいたが、偶然にも女の子と話したあの薄らい半個室席に案内され…ることはなく、お一人様用のカウンター席へ通される。そこで、あのお高いコーヒーを頼み、北海道の出来事をまとめることをしていた。箇条書きに、なるべく文章にせず、言われたこと、あったことの事実を思い出せるだけ多く、スマホのメモ帳アプリに記入していく。
コーヒーが完全に冷え切ったころ、ラインが来た。fさんからだった。現在札幌にいるのは私とfさんだけ。そして私とfさんは帰りの便も航空会社も同じであった。どうせだから一緒に帰ろうということになった。
『空港行く前にラーメン行きませんか?』
そうメッセージが来たので、私は二つ返事で了解の返信をした。
日は暮れ、更に寒さを増す曇り空の某所で待ち合わせる。雪もまた降り始めていた。ああ、これが北海道なんだなと寒さに震えながら感心していた。
fさんはbさんと一緒に来た。旭川に向かったbさんも丁度こちらに到着したらしい。bさんも今日帰る組であった。なので3人で北海道最後のラーメンを食べることにした。
fさんはグルメ男である。札幌でラーメンを食すためにラーメンウォーカーを買ったりしていた。そんなグルメのfさんが選ぶ何やらすごい有名らしいラーメン屋へ積もる雪道を掻き分けながら足を運ぶことにした。いつの間にかまた、昨日のように激しい横殴りの雪に変わっていた。
「これ雹じゃない?!」
道に迷っている最中、bさんがいう。確かに今降っている雪は何かおかしい。建物を連続で叩きつけるような音がしている。コートに付着したそれを見ると、何やらBB球のように丸い氷の粒であった。
「やばいやばい!」
我々は走って店に向かった。
なんとか目的のラーメン屋に到着する。凍るように冷たくなった足の裏と、途中雹から霙になったおかげでびしょ濡れになったコートによって震わさざるおえない固まった肩は、店内の暖かな照明と暖房の効いた空気に和らいでいた。店に客はまだ来ておらず我々3人は旅行荷物でカウンター席を占領するかのように座った。
目的の醤油ラーメンを喰らい、醤油も捨てたもんじゃないなと思っている最中、店員の、恐らく店長さんであろう人に話しかけられる。
「旅行っすか?」
「そうっすね、んまもうこれから帰るんすけど」
bさんが、軽ーい返答をする。
「飛行機?」
「はい」
「…大丈夫ですかねぇ。今雪凄いでしょ?今日結構激しいからもしかしたら欠航とかあるかも」
「えぇっ!」
「確認しといたほうがいいがもしれませんよ?」
店長さんの忠告を我々はすぐさま、それぞれのスマホを取り出して実行した。暫くしてbさんの顔が青ざめてきた。
「えっ」
「ど、どしたの…」
まさかとは思いながら私は恐る恐るbさんに聞いた。
「俺の乗る便…書いてないんだけどw」
「うそやん、まじかよw」
「まじまじwやばいどうしよー」
私とfさんが乗る便はちゃんと書いてあって、2人でホッとする。同時に、ホッとしながら彼の悲劇に我々はどうしたらよいかわからなかった。
「もしかして見てる日にちが違うんじゃない?もーちょっとよく確認してみって…」
「あっ、ほんとだw日にち違ってたわ…w」
「なんwwww」
bさんの壮大なボケに我々一同は笑った。雪いえど、欠航なんてよっぽどだ。普通は飛ぶにきまっている。そう笑いながら私達はラーメン屋を後にし、新千歳空港までの電車に乗った。空港に着き、bさんと別れた。私とfさんは2人で空港のチェックインを済ませ、お土産を選別し、ゆとりを持って荷物ゲートをくぐった。
『○○○、△△△便お乗りのお客様にお詫び申し上げます』
待合所全体に、いやもしかしたら空港全体に伝わる重要なものだろうか、不自然なほどにシートがごった返していて騒めいている待合所中にそんなアナウンスが響き渡っていた。
「なんか言ってますね」
fさんがいう。
「嫌な予感が…」
私にはわからない、だからかどうかはしらないが、代わりにアナウンスがこう答えていた。
『○○○、△△△便、悪天候のため欠航とさせて頂きます。』
【北海道ナンパ】は、まだ終わっていないぞと。