チョコボール向井さんのお店
- 2015/10/20
- 17:21
女の子も何もいなくなった歌舞伎町を後にして私は新宿二丁目のとあるバーに足を運ばせていた。チョコボールファミリー。元AV男優のチョコボール向井さん本人が経営されているバーだ。気持ち半分で応募して抽選を勝ち上がったAV男優オーディションで、まさかのMVPとして選ばれて以来、私はAV男優として生きていくことに決めた。男優さんはネットで調べるほど好きで、中でも一番好きな吉村卓さんに会いに行くためにこのオーディショ...
上書き保存、別名保存
- 2015/10/12
- 21:46
恋愛の失恋おいて女の子は上書き保存、男は別名保存と言われる。だから女は失恋からの立ち直りが早く、男はズルズルと引きずる。らしい。私はそうとは思わない。人間の脳とは、PCのように都合の良い形で作られていない。一度犯した過去とは変える事はできない。改竄する事も消す事も当然の如くできない。そういったなかった事にしたい失敗の記憶と感情はどこに行くのかというと、無意識下に葬られる。無意識とは行動を無意識下で決...
【納涼船講習2日目⑤】QBという男
- 2015/09/30
- 05:39
上野駅始発列車が到着し、私は座席に駆け込む。ぼふっと座席のクッションが凹むのがわかる。どっと押し寄せてくる疲れに胸元を押されるかのように背もたれに寄りかかる。もう立ち上がることはできないだろう。半開きの口は閉められず、目は勝手に起こる瞬きのみでそこから見ひらくことはおろか閉じることすらもままならなかった。列車は程なくして発車。到着。自動にドアが開く。人が乗る。乗る。乗る。増えていく車内人口。埋まる...
【納涼船講習2日目④】 公家シンジという男、相方Aという男
- 2015/09/26
- 23:29
※お二人の検閲済みの記事です。夜な夜な煌煌光を発する上野のとある一角のビル一階。その喫茶店に私は入る。入口手前のテーブル席に二人はいた。「負けました」私は席に着くや否やそう言葉を吐き出した。お疲れ、と、シンジさん、A君の労いの言葉が返ってくる。テーブルに置かれた飲みかけの三つのコーヒーカップ。「なんでカップ三つあるんですか?」二人以外に誰かいた、という思考すら働かず私はこのテーブルの当たり前の違和感...
【納涼船講習2日目③】儚、鬱、現
- 2015/09/22
- 02:07
タクシーに揺られながら朦朧とする私。そこに流星さんが私に聞く。「まだ終わっていないだろ。さっきの子のラインは?」「バンゲ出来ませんでした…」「そうか」流星さんはそれ以上は言ってはこなかった。私がその先の言葉はなんであるのか、もうわかっているという事を流星さんは察知していたのだろうか。私の予想だにしていた言葉はもう出てこなかった。自分が不甲斐なさすぎて流星さんの顔を直視できなかった。一方シンジさんはA...